パンデミック(感染爆発)
新型インフルエンザの流行(5)
防衛医科大学名誉教授 六反田 亮
WHOは12例(13例に増えています)のオセミタビル耐性ウィルスに注目しています。これらの分離株はオセミタビル耐性を与えるニューラミニダーゼ遺伝子変異(H227Y)(227番目のヒスチジンがチロシンに変わっている)を有していますが、ザナミビルには感受性です。8例はウィルス暴露後の予防投与に関連し、1例は基礎疾患のないケース、2例はオセミタビル治療を受けた免疫不全患者に関連しています。これらのケースは世界中の異なった地域で起こっています(日本4,USA2、香港2、デンマーク1、カナダ1、シンガポール1,中国1、9月9日に日本で6例目が報告されました。患者は既に回復し、周囲への感染拡大はみられていません)。これらの間に疫学的関連性はありません。これらのケースからの感染の証拠もありません。しかしこれらが広まると治療対策に大きな変更を余儀なくされます。大いに気になるところでしょう。
ひるがえって我が国の状況を見てみましょう。始めに書きましたように日本でも感染は広がりつつあります。 厚生労働省は9月4日、インフルエンザの定点医療機関(全国約5000施設)からの患者報告数が、8月24-30日の1週間で1施設当たり2・52になったと発表しました。前週(17-23日)の2・47より増加しており、新たに医療機関を受診した患者数は推計14万人に上ります。ほぼすべてが新型とみられます。
都道府県別では、沖縄が36・00と突出して多いが、前週(46・31)より大幅に減少しました。このことは他の県に較べて激しく流行していた沖縄でインフルエンザは沈静化に向ったといえます。一方大分3・72(前週1・59)、大阪3・08(同2・81)、福岡3・08(同1・74)、東京3・01(同2・64)の4都府県で初めて3を超え、大都市部で患者の増加が目立つようになりました。青森、栃木、和歌山を除く44都道府県で、流行の目安とされる1を超え、流行が広まりつつあることを示しています。
なかでも集団感染が増加しています。厚生労働省は9月9日、都道府県からのインフルエンザによる集団感染の報告が、8月31日-9月6日の1週間で2318件あったと発表しました。前週(1402件)の1・7倍に達し、大半が新型インフルエンザとみられます。同省は「学校の夏休みが明けた影響が大きく、特に大都市圏で集団感染が広がっている」と分析しています。
報告件数が300件を超えた東京と大阪は、2週前(8月17-23日)と比べ約10倍に急増しました。千葉、神奈川、北海道、福岡も初めて100件を超えました。自治体の要請で、学校や社会福祉施設などが臨時休業したケースは719件で、前週(302件)の2・4倍に増えています。集団感染の拡大は適切な対策を講じることによって抑えることが可能です。集団の責任者または管理者はこのことを念頭に置いておくことが必要です。個人的な注意が大切なことは言うまでもありません。
現在、一番注目を集めているのがワクチンの問題です。不足するワクチンの輸入、接種の優先順位、費用の負担、接種体制、事故の時の補償等が議論されています。これらの中には9月16日に発足する新政権の考えにも大きく影響されるものもあります。次の機会に取り上げて見ましょう。
米疾病対策センター(CDC)は9月8日、新型インフルエンザに感染しても、健康な人はタミフルやリレンザなど抗ウイルス薬による治療は原則として必要ないとする投薬指針を発表しました。これは現在我が国で行われている全く異なっています。与ええる影響も大きいでしょう。これも取り上げならないテーマかも知れません。
ここまで書いたところで昨日(9月10日)、米疾病対策センター(CDC)はタミフル」に対する耐性を獲得した新型インフルエンザのウイルスが、米国で、人から人へ感染した可能性がある事を発表しました。CDCは、健康な成人にタミフルを事前に飲ませる「予防的投与」など、耐性ウイルスの出現をまねく過剰使用を控えるよう呼びかけています。このケースでも感染者はタミフルやリレンザの予防的投与を受けていました。我が国でも早急に手を打つ必要がありそうです。