パンデミック(感染爆発)
豚インフルエンザ発生と流行(1)
防衛医科大学名誉教授 六反田 亮
「新型インフルエンザ」は動物のインフルエンザウイルスが人に感染し、人の体内で増殖できるように変化した後、人から人へと効率よく感染するようになった新しいウイルスによって発症する。現在、流行しているインフルエンザとは異なり、人類のほとんどが免疫を持たないため、簡単に感染しやすく、世界的大流行につながる恐れがあるものである。
全く突然と言っていいほどに、豚インフルエンザの発生が発表された。それは4月24日に世界保健機関(WHO)がメキシコと米国で、最近数週間に豚インフルエンザの人への感染が相次ぎ、メキシコ市周辺で約60人が死亡した疑いがあることを明らかにしたことから始まった。メキシコで感染の疑いがあるケースが800件報告されており、メキシコ市周辺で57人が死亡。同国中部のサンルイスポトシで3人の死亡が確認された。米国のカリフォルニア、テキサス両州では、7人が感染の疑いがあるというものである。その後感染者と死亡者は日に日に増加しているし、世界中に広まりつつある。
そして米疾病対策センター(CDC)は米国で確認されたウイルスはH1N1型で、伝染力があり人から人へ広がっていると断定した。H1N1型のウイルスは人の間でも流行していて、市販のインフルエンザワクチンには、H1N1型のウイルス抗原も含まれているが(現在市販されているワクチンにはどのよう型のウイルス抗原が含まれているかについては後述する)、今回流行し始めた豚インフルエンザウイルスはH1N1型ではあるが、かなり変異しており従来のワクチンは有効ではないようである(遺伝子解析によればこのウイルスはブタ、トリ、ヒトウイルスの混合(遺伝的再集合という)したものであることが発表された)。したがってこれに対するワクチンは、このウイルスから作成するしかない。新型インフルエンザと言われているものに相当する。
新型インフルエンザウイルスは今まで鳥インフルエンザウイルスH5N1型の変異によって発生する可能性が最も高いと考えられてきた。そのため新型インフルエンザウイルス対策は鳥インフルエンザに向けられていた。今回の豚インフルエンザの発生、流行はCDCやWHOの当局者も虚を突かれた思いであろう。
しかし豚は鳥インフルエンザウイルスにも人インフルエンザウイルスにも感染し、新型ウイルスの出現には大きな役割を演じる可能性は高い。鳥インフルエンザ対策の一つとして、鶏舎は野鳥の迷入を防ぐ施設であるが大切であるが、豚舎もこのような施設にすることが必須であろう。
個人で出来る対策は季節性インフルエンザ、鳥インフルエンザ、鳥由来の新型インフルエンザと全く同じである。これについては後述する。